フジエテキスタイルの創業は、今から130年余り昔の明治18年(1885)。冨士榮今市が京都西陣で織物製造業を興したことに始まります。戦争による一時廃業を経て、戦後ほどなく東京に拠点を移し、生地の卸売業として再興。物さえあれば飛ぶように売れた時代に、自らの審美眼にかなう上質の生地を提供することにこだわった冨士榮良治は、企画から手がけ、糸屋や機屋、染屋をまわって独自の生地づくりに取り組みました。上質の追求、他にはないものづくり。今につながるフジエテキスタイルの原点がここにあります。
1963年、大きな出会いがありました。テキスタイルデザイナー粟辻博氏の個展を訪れた冨士榮良治は、初対面の粟辻氏と、テキスタイルデザインへの強い思いと高い志で意気投合。パートナーとして共に商品開発をスタートさせます。「デザイン」という概念がまだ浸透していなかった時代に、数々の試行錯誤を重ねながら打ち出した斬新なコレクションは、インテリアテキスタイル業界においてデザイナーを起用したものづくりの先駆けとして注目を浴び、フジエの名が広く知られるきっかけになりました。
1990年代、フジエテキスタイルのものづくりは、世界的なファブリック会社の創始者にしてテキスタイルデザイン界の巨匠・ジャック・レナ―・ラーセンの目に留まり、ラーセンブランドとして世界のマーケットに紹介されました。ラーセンに選ばれたパートナーとして欧米のテキスタイル展にも出展するなど、日本のテキスタイル業界では初となる貴重な経験を重ねた私たち。そこで学んだ本場の感性やものづくりの精神は、いち早く世界に認められた誇りとともに私たちのなかに息づいています。
フジエテキスタイルのデザインの根幹にあるのは「シンプル&モダン」というコンセプト。古来、日本の風土や伝統、文化の中に脈々と受け継がれてきた普遍的な美意識「シンプル」に、「モダン」すなわち「今」のエッセンスを加味することで、常に新しいものを生み出そうとしています。それを可能にするのは、糸、織、染それぞれに高度な技を誇る国内外数十社の協力工場とのつながり。培われてきた信頼関係が、私たちのものづくりを支えています。
私たちはさらなる一歩を踏み出します。フジエテキスタイルのディレクションのもと、創造性あふれる日本の職人やクリエイター、広く世界の才能ともコラボレーションしながら、もっと豊かに、もっと楽しく、インテリアテキスタイルの可能性を拓き、発信していきます。新たな出会いから無限に広がるデザインの次なるステージにご期待ください。